2011年2月 9日

名誉平社員

名誉平社員
 仕事で中小企業の社長さんとか重役さんに会うと、たまに見かけるのが「社長になっても現場で働いているのが誇りです」というタイプの人です。まあ、従業員5人くらいならアリなんですが、20人以上の会社でそういうタイプの人を見かけると、この会社、ほんとに大丈夫なのかと思ってしまいます。
 たとえば営業の課長が現場の仕事が大好きで、平社員と一緒に朝から晩まで営業していますという会社。一般的には、陣頭指揮タイプの猛烈課長ということで美談になりますが、ちょっと考えてみると課長が営業をやっている時間が多くなればなるほど、管理職をやる時間はつぶれていきます。管理をしてくれる人がいなければ、部下は自分で自分を成長させ、キャリアを積むしかなくなります。これではよほど向上心がなければ、伸び悩むことになるでしょう(日本の企業が就職活動で必須条件としている「向上心」は、実はこういうところに根っこがあるのかもしれません。自社の環境では人を育てられないと自覚しているのでしょう)。
 これを会社からみれば課長ではなく、給料のよい営業マンを雇っているのとかわらない状況になりますが、それでもその課長が凄腕の営業なら、課全体としての成績は上がることになります。会社は結果が全てですから、その功績が認められて課長は部長になります。
 そのとき、部長になった課長はやっぱり営業をするのでしょうか? それとも経験値のほとんどない管理職をやるのでしょうか? また課長の部下だった社員が新しい課長の下ではどのような評価を受けるのでしょうか? 部長になっても営業をして、それで功績をあげてしまったら次は社長ですが、社長になっても営業をするのでしょうか? そうなったときは会社全体が管理されず、放任されてしまうのではないでしょうか?
 端的にいって、陣頭指揮タイプの猛烈社員は管理職にしてはいけません。それは本人にも周囲にも迷惑なことです。しかし、実際に功績をあげているのなら、それが本人にも周囲にも迷惑であっても、会社として昇進させて報いなければなりません。
 そこで、そういう猛烈社員に報いるために「名誉平社員」という階級を作るべきではないのか、というのが本日の話。現場の仕事が好きなら管理職とは違う方向の出世を約束してやり、名誉平社員を極めれば社長給料に匹敵する額をもらえるという制度が一般的になれば、管理ができない管理職がまわりを不幸にすることもないし、経営者の経営音痴も減るはずです。
 また、これを応用すれば、政治家になることが名誉だと考えている「政治ができない政治家」も排除できるようになるのではないでしょうか。
 そういえば物の本によると、日本の会社の組織構造は、明治のはじめごろに軍隊の組織構造を参考に制度化されたとあります。それではその軍隊の組織構造はどこから来たのかと調べてみると、意外なことにお寺の徒弟制度をお手本にしているらしい。お寺の徒弟制度が採用された理由は、昔から日本にある大規模な組織で、西洋の軍隊制度に近い制度を採用している組織がお寺だったという......自分で書いていても本当にそうなのか不安になる理由からでした。管理職になる以外の出世の方法がないのはそのへんの影響だとかなんとか。

 以上、取締役という肩書きは欲しいけれど、現場が大好きで仕方ない某社の社長さんの自慢話を聞いていて、そんなことを考えた。

コメント(4)

この論には、営業として肩書が必要な場合が抜けているかと思います。先方の社長に営業する場合、こちらもせめて部長は連れてこいとか言われることもあったりするわけで、その場合は肩書としての管理職が必要になりますよね。
トップ営業というのも似たようなもので、社長同士の経営者集会で営業案件が発生することもありますし、一概に平のままでいいわけではないと思います。
・・・とはいえ、平社員の営業と同じようなことをやっているのであれば色々と難しいものではあります。対外的な肩書と社内の役職を切り離せれば一番いいのでしょうけれども、何かいい手はないものかと。

みなみうりさん
そりゃ制度的に偉い人が管理職しかいなければ、「管理職を連れてこい」ってことになりますが、制度的に偉い平社員、つまり名誉平社員が存在したら、それで済ませられないかという話になるわけですよ。

もちろん主眼は、撃墜王のハンス・ヨハヒム・マルセイユみたいな人が、管理職をやらないですむ方法として、鉄十字勲章をあげましょう的な方向ですが。

>そういう猛烈社員に報いるために「名誉平社員」という階級を作るべきではないのか、というのが本日の話。現場の仕事が好きなら管理職とは違う方向の出世を約束してやり、名誉平社員を極めれば社長給料に匹敵する額をもらえるという制度が一般的になれば、管理ができない管理職がまわりを不幸にすることもないし、経営者の経営音痴も減るはずです。
トヨタにはすでにありますね、この制度。というか、ほとんどの製造業の開発部門ではフェローという名前で10年位前から導入されていたような。田中耕一さんが有名。

あと、
>制度的に偉い平社員、つまり名誉平社員が存在したら、それで済ませられないかという話になるわけですよ。
ならないと思います。管理職を連れて来いってのは、当該プロジェクトの決済を決められる決裁権を持つ人間を連れて来いと同義語なので、名誉平社員はこのようなときには役立たずです。で、決裁権を持っていたら、それはもう平社員じゃないです。

フェローとかそういうのがまだ一般的じゃないでしょって話ですよ。
そういうのを一般的にしたほうがよいんじゃないかという話。

決裁権持った人をこちらが呼ぶのは、それはそれでいいんですよ。
でも、呼んでもいないのに偉い人が営業しに来るんですよ。ドヤ顔されても困りますがな。